巡る街vo.2 コンパクトな城下町・松本市の風情

巡る街

信州・松本市へ、2日間のセミナーに出かけました。
駅前のホテルに泊まったので、移動はとてもスムーズ。ストレスのない旅の始まりです。ただ、街の道は少し狭く、一方通行が多いのが特徴。そんなところも城下町らしい雰囲気を感じさせます。

中町通りを歩くと、白と黒のなまこ壁が続き、蔵づくりの店が並んでいます。まるで昔にタイムスリップしたようで、思わず足取りがゆっくりになります。セミナー会場へ向かうバスでは、観光案内のようなアナウンスが流れ、ちょっとした観光気分。市内をぐるりと回る「くるりバス」というそうです。帰りは遠回りになるので歩いてみることにしました。

途中、信州大学の学生さんに駅までの道を尋ねると「徒歩20分くらいですよ」とのこと。歩き始めたものの少し不安になり、同年代らしき方に声をかけると「駅前で2次会があるので一緒に行きましょう」と。思いがけず、地元の方と並んで歩くことになりました。 

その方から聞いた話では、中町通りの景観は市民の協力で20年以上かけて整えられたものだそうです。「駐車場に赤い自販機を置かないように断ったこともあるんですよ」と誇らしげに語ってくれました。駅前に近づくと、古い銀行建築を活かしたビルや、地元紙が運営するコミュニケーション広場付きの近代的な建物が並び、歴史と新しさが共存しているのが印象的でした。

駅前で「信州そばのおススメは?」と尋ねると、まずはアーケードの立ち食いそば屋を紹介してくれました。私が少し物足りなそうにしていたのを察したのか、さらに料亭風のお店まで案内してくださり、「温かい蕎麦ならここ、冷たい蕎麦ならあちら。馬刺しもぜひ」と。そこで黒いそば粉を使った『田舎蕎麦』と馬刺しをいただきました。素朴で力強い味わいに、旅の疲れもすっかり癒されました。

そして最終日。ホテル前の「駅そば」で食券380円の温かい蕎麦をいただいたのですが、これがまた美味しくて感激。前日に案内してくださった方は、観光客としての私に“松本の良さ”を最大限伝えようとしてくれていたのだと気づき、胸が温かくなりました。

さらに「シニアが老後住みたい街ランキングで松本市がNo.1なんですよ」と誇らしげに教えていただきました。理由は“三がく”――岳(山)、学(大学)、楽(小澤征爾さんの故郷)。市民が自分の町を誇りを持って語る姿に、私も自然と好感を抱きました。

小さな城下町に息づく人々の誇りと温かさ。松本市は、旅人の心をやさしく包み込んでくれる町でした。

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